2019年06月18日

「重大ないじめ」と認定されないといじめは放置される─大阪・吹田市いじめ事件

大阪府吹田市立小学校に通う小学5年の女児が1、2年生だった平成27年秋ごろから29年3月まで、同級生の複数の男児から暴行されるなどのいじめを受け、骨折や心的外傷後ストレス障害(PTSD)を負っていたことについて、吹田市が設置した第三者委員会が明らかにした件で、当該小学校の問題が報告書などによって明らかになってきました。

マスコミ報道では「教師が被害児童からのいじめ報告を放置した」とありますが、なぜ児童の被害申告を放置することになったのかを検討してみたいと思います。

■日本の学校教育は学習指導だけではなく、生活指導も求められる

「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律」によれば、小学校における1学級あたりの児童は35人(1年生)または40人(2〜6年生)と定められていて、この学級には教諭1人が担任として割り当てられています。学校の規模にもよりますが、学校全体としては、学級数に対して1〜1.3倍程度の教諭がいれば充足するとされているので、ものすごく条件が良い場合で教諭1人当たり児童約30人、状況によっては40人に対して指導を行わなければなりません。
この人数に対して、主要科目について学習指導を行うほか、生活指導を通して生徒の健康や生活環境を整えていくのです。

児童の中には発達障害を抱えているとか、家庭の環境が悪いなど、様々な事情で学校生活に問題のある者がいることもあって、教諭は日々、あらゆる問題に対処しなければならない立場にあります。
40人の児童のうちのたった1人の児童が何らかの問題行動を起こしてしまうなら、教諭が聞き取り調査や解決に向かうための指導を行うことで解決するかもしれませんが、その問題の児童が2人、3人と増えてしまっていくとどうなるか。
ただでさえ学校は様々な行事のある施設ですから、対応しきれなくなってしまうのは想像に難くないと思います。


■吹田市の女児いじめ事件はなぜ放置・隠蔽されたのか

国は平成25年に「いじめ防止対策推進法」を施行し、平成29年に「いじめの防止等のための基本方針」が改定されると同時に、「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」が策定されました。
女児へのいじめは平成27年の秋から始まったとされていますから、学校が積極的にいじめ防止の対策を講ずるための法整備が行われているさなかの事件でした。


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「調査報告書(公表版)」吹田市いじめに係る重大事態調査委員会

報道によれば、被害女児が学校の複数回のアンケートに答え、いじめの事実を申告しているのにも関わらず、教諭が児童に具体的な内容を聴取しなかったことが報じられています。一方、吹田市による報告書によれば、そのアンケートを紛失・破棄したとあります。

これは何を意味するか。「いじめの事実を見つけてしまうと、仕事が膨大に増えるから、見なかったことにした」のでしょう。
第三者委員会によって当該教諭に聴取したところで、「大きなケガもないので、面倒な報告はしませんでした」などと正直に言うはずもありません。「忘れた」「うっかり破棄した」と回答してしまえば、教諭自身も上司も傷つきません。
もちろん、アンケート調査を実施・破棄した教諭の心の中までは見えないので、「ちょっとした意地悪や口げんかなどで教諭がいちいち介入しているときりがない」と判断したのでしょう。しかし、その放置が女児の骨折・PTSD・視力低下を招いたのです。


■傷害になって始めて認知される「重大事態」とは何か

吹田市は、いじめ防止対策推進法に基づき、基本方針を定めています。

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「吹田市いじめ防止基本方針」吹田市・吹田市教育委員会

この方針の中で、「重大事態」についての手続き等を定めた箇所があります。

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3 重大事態への対処
【参考】重大事態とは
一 いじめにより当該学校に在籍する児童等の生命、心身又は財産に重大な被害が生じた疑いがあると認めるとき。
二 いじめにより当該学校に在籍する児童等が相当の期間学校を欠席することを余儀なくされている疑いがあると認めるとき。
<いじめ防止対策推進法第28条第1項>

(1) 重大事態の報告
重大事態が発生したときは、校長は速やかに教育委員会に報告し、教育委員会は市長に事態発生について報告するとともに、公平性・中立性を確保しながら調査を行います。
吹田市いじめ防止基本方針9ページより引用

この文言は、「状況に応じて適切に対処する」という意味だが、要するに「いじめにより死傷者が出た時、1か月以上の不登校があった時はきちんと調査せよ」という学校関係者への指示であって、これはつまり、「ケガや長期欠席がなければ対処しなくていい」という反対解釈が成り立ちます。

もちろん、再発防止のために第三者委員会を組織し、加害事実を確認するマニュアルとなっているから、かなり仰々しい手続きになります。仰々しい手続きだからこそ、学校長・副校長・教頭などが自発的にいじめ予防を促す効果が期待できるのですが、この方針が強ければ強いほど、学校内でいじめが起こると担任などは「指導力のない教諭」というレッテルを貼られることを恐れ、「少々のいじめは見なかったことにする」という隠蔽志向に変質していくのだと思います。


■本質的ないじめ防止は「業務の分担」「簡易な報告」「問題の顕在化」

我が国の学校は、生徒・児童をしっかりとコントロールできる教諭を「指導力が高い」と評価する傾向にあります。だから、どんな家庭環境にある子どもでも、指導力の高い教諭のもとにいれば、いじめも起こらないし、学ぶ意欲も向上するという建前です。だからその結果だけを手っとり早く得ようとすれば、生徒・児童の問題行動は、見なかったことにしてでもゼロにしなければなりません。しかし、いじめはどんな社会にでも存在します。そこで、死傷者が出るなど、「重大事態」に陥らないためには、小さないじめをひとつひとつ捉えていく必要があります。

◆教諭の業務を分担せよ
公立学校は、どうしても少ない予算の中で、限られたマンパワーの中で運営していかなければなりません。現場では、学習指導と生活指導を同時に行うのは、無理が生じやすく、いじめなどのイレギュラーな問題が生じた時に対応が困難になってしまいます。そこで、子どものメンタルに関わることも多い問題なのだから、臨床心理士などの専門資格を持つ人材をスクールカウンセラーとして常駐させ、生活指導上の問題については、カウンセラーの指導のもとでいじめ防止策を行うべきではないかと思います。

◆いじめ報告書は簡易なもので行う
今回、吹田市が公開したいじめ報告書は、32ページのものとなりました。今回は被害女児が骨折・PTSD・視力低下という重大事態に陥り、かつ放置・隠蔽などが大きく報じられたからこのような詳細のものになったのですが、学校生活で起こる、日々のいじめ等については、教諭の負担を軽減するためにも、200字程度で書き終えられる簡易な報告にとどめるべきです。詳細・厳格に報告するよう義務づけると、どうしても報告が遅くなったり、「事件なんて見なかった」ことにしがちだからです。

◆いじめは顕在化が最大の予防
多くのいじめ(大人の社会ではハラスメントとも呼びますね)は、人の見ていないところで起きます。
もし、軽微であってもいじめを発見した場合、傷害や不登校に至ってなくても、いじめが起こったと推測できる場合、教諭や学校関係者はどのようにすべきか。
まずは複数の大人が情報を共有した上で、「いじめは絶対に許さない」、「卑怯なことをする奴らは絶対に許さないし、それを口に出さない人も加害者をかばうことになるから許さない」と、毅然とした態度で宣言すべきなのです。

これでいじめを100%防止できるなんてことはありませんが、陰湿・執拗ないじめはかなり無くなるはずです。
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2019年01月31日

親からの児童虐待事実をその親に伝える…千葉の小学校はそんなに程度が低いのか

子どもが虐待を受けているかもしれないという情報を得て、その虐待の加害者(父)の求めに応じて子どもの被害告知を差し出すって、おいおい、この小学校、何考えてるんだ?

いくらなんでもそれはまずいってわからないのか?

何のための教員免許だ?

スクールカウンセリングの基本は「子どもが望まないのに親や友人にばらしちゃダメ」っていうものじゃないか。

訴訟を起こされようが、殴り掛かられようが、子どもの秘密を守れない学校って、千葉はそんなにレベルが低い学校がある地域だったのか?

もちろん、問題があったのはこの父親。子を殴ることも殺すことは最高に卑劣だから、少なくとも20年は国の施設で団体生活していただくべきだけど、子どもを守れない小学校ってどうなんだよ。


「父からいじめ」アンケート回答、市教委が父親に渡す 千葉女児死亡
 千葉県野田市の小学4年、栗原心愛(みあ)さん(10)が自宅で死亡し、父勇一郎容疑者(41)が傷害容疑で逮捕された事件で、市教委は31日、心愛さんが2017年11月に「父からいじめを受けている」と訴えた学校のアンケート結果を容疑者に伝えていたことを明らかにした。県柏児童相談所には経緯を説明しておらず、市教委は「不適切だった」としている。

 市教委などによると、心愛さんは17年11月6日に当時通学していた市立小学校で実施された全児童向けのいじめに関するアンケートで「父からいじめを受けている」と告白。その後の学校の聞き取りに「母のいないところでたたかれる」などと説明していた。市を通じて連絡を受けた柏児相が翌7日に心愛さんを一時保護した。

 勇一郎容疑者は一時保護を受け、学校に「通報したのか」「訴訟を起こすぞ」などと詰め寄った。保護は同12月27日に解除されたが、容疑者が「アンケートで(被害を訴えていることが)分かったんだろ。実物を見せろ」などと学校への不信感をあらわにしたため、学校から連絡を受けた市教委職員が翌18年1月15日、心愛さんが被害を書き込んだアンケート用紙のコピーを容疑者に渡した。

 容疑者の意向によって、心愛さんは直後の18日に野田市内の別の小学校に転校させられた。いじめアンケートは転校先でも2回行われたが、心愛さんが「父からのいじめ」を訴えることはなかった。

 市教委は「子供が恐ろしさを感じていることを父親にも知ってもらいたかった。一時保護に対する怒りを抑えてもらう狙いもあった」と釈明。一方で「配慮を著しく欠いていた。大変申し訳ない」と陳謝した。

 東京都内の児相に勤務していた元児童心理司の山脇由貴子さんは「非常に問題のある対応だ。父親のクレームに屈して子どもが責められる材料を作り、子どもの安全を守るという本来やるべきことが後回しになった」と指摘。その上で「この対応によって(心愛さんが)被害を訴えられなくなった可能性がある」と話した。

 森田健作・千葉県知事は31日の定例記者会見で、一時保護後に自宅を一度も訪問していなかった柏児相の対応などについて「隙間(すきま)があったのは事実」と述べ、第三者委員会を設置して検証する方針を示した。また、今年1月から学校を長期欠席していたことを柏児相が死亡直前まで把握できなかったことから、県は所管する6児相に対し、在宅指導中で約1カ月程度安否確認ができない状態の児童がいないか、早急に確認するよう通知した。【斎藤文太郎、町野幸】

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2018年04月23日

学校でのあだ名(ニックネーム)禁止校則はベストではないがベターではある

2018年3月25日にabema.tvの「アベマプライム」にコメンテーターとして呼ばれ、2018年4月10日にFBS福岡放送の「めんたいワイド」に、インタビューされ、フリップ出演しました。

どちらも、小中学校などの校則であだ名、ニックネームを禁止し、原則として名字に「さん」付けとなっていることの賛否について問われました。

私はこの校則が増える傾向について、「ベストではないが、ベターだ」という意見を持っています。

あだ名(ニックネーム)も、呼ばれて楽しいものはあります。

松本なら「松っちゃん」、浜田なら「浜ちゃん」とかなら、呼ばれた人は不愉快に思う人もいないだろうし、名前の一部を使って呼ぶのですから何の違和感もありません。

だけど、体型をいじられるようなあだ名や、不潔な虫や動物の名で呼ばれたらどうですかね?

私は小学生の頃、体型をいじられ、「デブ」と呼ばれていました。それが嫌で、先生に言いつけたら、担任の先生が「デブと言ってはいけません」と禁止令を出し、一旦は無くなりました。
しかしその後、「デブ」ではなく、「デー!」とか「糖尿病」と呼ぶようになりました。
そう、あだ名はいじめツールとして使われると、無限に、いくらでも発明されるのです。

体型だけではありません。小学校なら大小便を漏らしたとか、中学校なら第二次性徴期に関わる恥ずかしいことをあだ名として呼ばれたらどう思うか。大人から見ると、別にそんなことでいじられたからって、大したことはないし、そんなの気にしなきゃいいと思うでしょう?

そう。そのように思えてしまう人は、言われた側の気持ちがわからない、残念な人だと私は思います。
子どもは、こういう状況を辛く厳しい状況と感じ、それがきっかけで不登校にもなります。目に見える反応が無くても、心に傷を持ち、いじめられた人は、誰かをいじめることでストレスを発散しようとします。そして行き着く先は絶望感に襲われ、自殺という選択肢が頭をよぎります。

学校の教員は、ただでさえ1人で数十人の子どもについて、学力や人格形成を見届けなければならず、ひとりひとりの個性や状況を把握し、「これはいじめではないか???」とニックネームをチェックして決めるなんてことはできません。
今どきの教員はそんな暇ではないのです。

教員が疲弊している現場で、いちいち「いじめにはならないニックネーム」の検討・チェックを要求するくらいなら、一律「男女問わず、名字にさん付け」と決めてしまう方が、ベターな判断ということになります。
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2013年10月14日

いじめ対策はただひとつ

「いじめ」をめぐる問題について、いろんな対策を講じられるものの、「いじめ」という現象を根本から無くす方法なんてありません。

クラスの中で、いじめのターゲットになるのは、体も弱く、学力も低く、もちろんケンカなんてできない人と、だいたい相場が決まっていて、一方、いじめをしてしまう立場の人というのは、いじめをしても反撃してこないであろうそのターゲットを見つけ出し、理不尽な行動を行います。

「理不尽な行動」というのは、暴力行為、暴言、無視、いたずらなど、嫌がらせ手法としては多岐にわたります。

同級生が同級生に行うもの、部活などの後輩に行うもの、教師が生徒に行うものなど、いろんなバリエーションはあるものの、発生パターンとしてはすごくシンプルで、それはこの一文で表現できます。

「絶対的な力関係にあって、反撃・反論・他の機関に判断を委ねられない状態」

学校内であれば「告げ口するとよりいっそういじめられる」。
職場であれば「クビや左遷の対象となる」。
家庭内暴力であれば「離婚されて経済的基盤を失う」。

また、面識のない相手でも、ただ「あいつがむかつく」というだけで、ネット掲示板に悪口を書くとか、家の玄関に汚物を置いていくなんて嫌がらせがありますが、これも同様で、「絶対的な力関係にあって、反撃・反論・他の機関に判断を委ねられない状態」だからこそ、そういう卑怯なことができるのです。

さて、この問題。「いじめ」というと、学校内の違法行為・反道徳的行為と思われがちですが、もう少し広げて、「嫌がらせ」として捉える必要があると思います。

「いじめ」などの「嫌がらせ」行為が発覚した組織(学校や職場)では、必ずこういう会見を行います。

「今後、同様の問題が起こらないよう、しっかりと指導していく所存である」

きちんと非を認めて、組織運営をきちんとやっていく立場としての謝罪会見としては合格点ですが、じゃあ、具体的にどういう対策を取るのかについて、きちんと説明する人はいません。
せいぜい、学校なら教師に対して「いじめの起きない学級運営をせよ」、会社なら「セクハラ・パワハラが起きないように人事管理をしっかりせよ」と命ずるだけ。具体的な方策などはありません。だから、現場としては、「次からは内部告発とかされないようにしよう」、「自殺しそうになるやつがいたら退学・退職させてしまおう」…などと、事なかれ主義が横行します。
現実問題として、いじめや嫌がらせというものは、「みんながマニュアル通りにやっていれば絶対に起きない事象」ではありません。誰もがマニュアル通りにやっているつもりでも、手抜きをする方法を思いついたり、見つからないようにすればいいんだという雰囲気は必ず生まれ、多かれ少なかれ、全ての組織にそのような事象は起こります。
だから、「しっかりと指導する」なんていう、アホな文言で記者会見に応ずる管理職がいたら、「次からは見つからない方法を考えます」と言っているようなものなので、そのような会見を行おうとする人たちは気をつけた方がいいかもしれませんね。

事なかれ主義ではなく、本質的にいじめ問題を解決させようとしたら、どういう方策があるのか。
実は学校でも職場でも、一版社会でも、効果的ないじめ対策はただ一つしかありません。
それは、「問題を顕在化させること」なのです。

いじめが起こったとするならば、内々で処理するとかではなく、しっかりと手順に沿って、「誰と誰が当事者で、具体的にどのような嫌がらせ行為があって、なぜそのような行為が行われたのか」をきちんと聞き取り調査をして、一定期間(3年間とか)、その情報を保持すべきなのです。
それは一版社会でも同じですよね。会社内で上司がセクハラ・パワハラしたとするなら、会社の責任者や関係部署がきちんと調査して記録を保持しておくべきなのです。その聞き取り調査そのものが予防措置になるし、次に同様の問題が生じないための方策にもつながります。

以前、私はある学校経営者から、大手ネット掲示板に生徒や教職員の名誉毀損情報を書かれて困っている旨の相談を受けたことがあります。私はそういう輩(書き込みを行う人)は、自分の名前が明らかになるまで、絶対に書き込みをやめないから、少々の予算を組んで、警察や裁判所を使ってでも戦うべきだと進言し、現実にその人物の名前が判明したのでした。
不思議なことに、このノウハウを持っている弁護士は多くありません。私の修士論文はまさにその電磁的記憶媒体の民事訴訟法的な証拠価値でしたので、その学校の弁護士から依頼されて、私が関係書類を作成するという、変な話になったのでした。
そしてやはりこの学校についての書き込みは止まり、書き込んでいた人物も判明したので、間もなく刑事事件に発展する見込みとなっています。

以上のことから、学校関係者に会社関係者など、いじめをめぐる問題を抱えているみなさんに、教育ジャーナリストとして申し上げておきます。

「今後、同様の問題が起こらないよう、しっかりと指導していく所存である」

……と、本気で思っているのであれば、今後は「問題が起こらないよう」にするとともに、「問題が起こったときにはこう動く」という手続きや手順を考え、問題(いじめや嫌がらせ行為)が顕在化するように規則を作っていくべきだと思うのです。これらは企業のコンプライアンス条項を策定する専門家などに頼むというのが一般的です。
必要であれば、私がノウハウを伝授した法律家も紹介しますし、問題を解決に導くための規則策定なども手伝います。

「ハインリッヒの法則」というものがあります。
これは労働災害における経験則で、一つの重大事故の背後には29の軽微な事故があり、その背景には300の異常が存在すると呼ばれています。
ハインリッヒの法則-ウィキペディア

もしみなさんのいる教育現場で、5件・10件のいじめ事件が発生しているとしたら、次に発生するのは「自殺」かもしれません。それが職場で5件・10件のセクハラ・パワハラ事件が報告されているとしたら、次には労働基準監督署が大騒ぎして立ち入り調査するかもしれません。

「教育現場はあくまでも教育現場であるべきで、職場はあくまで職場でなければなりません。人が死ぬほど悩みを抱えなければならない場所ではありません」と、私はみなさんに訴えていきたいと思います。
posted by まつもとはじめ at 01:51| 神奈川 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | いじめ問題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年08月20日

いじめはいじめられる側に問題があるのか

私の記憶によれば、私は小学校以来のいじめられっ子体質で、その体質は今でも治っていないんじゃないかと思っています。「三つ子の魂、百までも」(3歳の子どもの性格は100歳まで変わらない)ということわざがありますが、その通りなんじゃないかと……。

よく考えてみれば、私は運動が苦手で学校の成績も特別良い方ではありませんでした。
なのに、振り返ってみれば、学校生活ではかなり異様なふるまいをしていたことから、変な意味で目立っていたし、いじめっ子の恰好のターゲットになっていた。学校生活で、少々変なことをしてもいいのは、運動会で活躍できる子か、頭の(学業成績)良い子と相場が決まっているのに、その相場に従わずに変なことをしていれば、そりゃ目立つし、突っ込みたくもなるだろう。
よく考えてみると、周囲の空気を読まず(読めず)、自分の主張を押し出してしまうこの癖が元凶なのかもしれません。

今になって思うと、周囲の空気を読まず、変なことを口走ったり、自分の思うことを実行したりするというのは、確かにいじめのターゲットです。それでいて腕力もなければ学業も適当となればなおさらです。

空気を読めない発言をするということは、時として人を傷つけることもあるわけです。そんな人が近くにいたら、とりあえず無視するだろうし、うるさかったら「おまえはウザイ」と言うだろうし、しつこかったら殴りたくもなるでしょう。空気の読めない人に、「もう少しこのコミュニティの空気を読め」というメッセージが、一つのいじめの原因といえます。
だから、経験者として述べるなら、いじめを受けて悩んでいる人は、まずいじめの原因が自分に無いのか、きちんと省みるべきだと思います。

ここまでは、よくある「いじめられるお前にも原因があるんじゃねーの?」で済ませる話です。

しかし問題は、そのいじめのターゲットにされた人が、そのターゲットにされた理由を告げられないまま、省みる機会も与えられないまま、またはターゲットにされた理由を改善しているのにもかかわらず、理不尽ないじめを受け続けるということです。もちろん、ターゲットにされた理由は単に空気を読まない行動もあれば、身体障害によるもの、顔や体の問題など、どうやっても改善できない問題を抱えている人もいます。

いじめられる側にいる人にとって、いじめを受けても仕方のない自分自身の原因が50として、その50までのいじめを受けるというのなら因果応報というか、「目には目を」で説明がつきます。
しかし、50に対して100とか、10に対して100など、不均衡ないじめに対して、いじめられた側の人はどう対処すべきなのでしょうか。

これが学校で起きた問題であれば、私は躊躇せずに「不登校」を選ぶべきだと思っています。少なくともこの行為で問題が顕在化します。普通の教師であれば、「何か原因があるはずだ」とわかるはずです。そして、躊躇なく教師に言いつけるべきだと思っています。できることなら弁護士を介入させて、法的な行動をとるべきだと思っています。

これが一般社会で起きた問題であれば、私はやはり躊躇せずに「法的手段」を選ぶべきだと思っています。
法的手段は、警察・弁護士・裁判所などを使うことから、「大げさ過ぎやしないか?」と疑問を持つ人も多いと思います。学校内のような、未熟な人たちが集まる場所でのいざこざなら、最初から警察に頼るのはよくないというローカルルールもありだとは思いますが、一般社会であれば、もう告げ口する相手もいないのですから、当然の行動だと思います。

ちなみに私は19歳の時に、大学のサークルで飲酒を強要され、そのサークルを退会するという手段を取りました。飲酒を強要した側は、「大人としてのたしなみを教えてやった」のかもしれませんが、私の受忍限度を超える強要はたしなみも何も、人間関係を円滑にするしないの問題を通り越しています。そして私は学長宛に手紙を書きました。法学部を有する大学で、20歳未満の学生に飲酒を強要するのはいかがなものかと。私の手紙が契機かどうかはわかりませんが、その後、神奈川大学は本格的に飲酒の「強要」には厳しくなり、学生の飲酒で多数の問題が発生する学園祭を3年間に渡って取りやめることになりました。学園祭の中止は学生にとっては不満だったかもしれませんが、私の行動が契機だとすれば、私の行動によっていくつもの命が救われたはずです。

あと、以前、私のブログで「殺す」と脅迫してきた人は、警察の捜査でドコモの携帯からの発信であることがわかり、IPアドレスから所有者を特定したところ、とある役所の職員でした。もちろん、彼は私を本当に殺す気はなかったと思いますが、私は厳罰を求めました。結局、彼は責任をとって辞職し、逮捕も免れて起訴猶予となりましたが、あれを放置すれば本当に殺人者となっていた可能性もある(大したことない脅迫に驚いて自殺する人がいます)わけですから、結果的に私は彼が人殺しになるのを防いだと自負しております。
なお、被害者がきちんと処罰意識を持って警察に通報(被害届・告訴状の提出)をすれば、仮に微罪だからという理由で今回は捜査がなされなくても、記録は残る訳ですから、同じことを行ったら次は逮捕となるようです。

余談が多くなってしまいましたが、結論です。
「いじめ」は間違いなく、「いじめられる側」に問題があります。この場合の「問題」とは、「原因」と同義です。
しかし、その問題を解決するために、暴力やその他様々な嫌がらせを用いるのは間違いです。もし誰かが不愉快な態度を取ったのであれば、せいぜい口喧嘩で済ませればよいのです。
そしてその「いじめられる側」になってしまった人は、絶対に放置せず、勇気をもって「不登校」を決め、教師への「告げ口」、そして警察への「通報」をしましょう。いじめられっぱなしで放置すると、いじめた側が別のターゲットを見つけてエスカレートするだけではなく、今度はいじめられたあなたの心に「嫌なことがあったら自分より弱い者を見つけていじめればいいのだ」という思いが目覚めてしまうのです。
いじめられたら、いじめた者をきちんと更生させるため、相応の手続を踏む。そのために司法制度や司法機関があるのです。
「いじめられる側の問題」を、より弱い「いじめられる人」に連鎖させないため、きちんと法的手続をとりましょう。

ちなみに私は、こんなことは絶対に無理だと思っています。著者の方、ゴメンナサイ。
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いじめはなくせる―教室ですべきこと [単行本] / 大西 隆博 (著); アニカ (刊)
posted by まつもとはじめ at 19:36| 神奈川 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | いじめ問題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする