正直なところ、金もかけず、読む手間をかけず、ネット書店の表紙だけを読んで反論されても困りますし、そんな人にタダで教えてあげる義理も無いのですが、そういう情報のタダ取りを要求する人に限って、勝手な思い込みをして「この本は題名からして誤っている」などというので、正直なところ迷惑です。
そこで、この際だからこのブログで「同じである」という理由を述べようと思います。
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短大・専門学校卒ナースが簡単に看護大学卒になれる本 改訂3版 ─総予算25万円で看護学士に!大学評価・学位授与機構活用法
まず、基本的な定義から述べたいと思います。
「大卒」というのは何を指すのか。日本では、大学を卒業することを「大卒」と言います。
大学には4年制の他、医療系の学部には6年制のものがあります。つまり、日本において大卒とは、この4年制大学か6年制大学を卒業することが原則です。
そしてこの4年制大学の卒業要件は、4年以上在学して、124単位以上を修得することとなっています。大学や学部によって140単位以上が卒業要件となっているところもありますが、それはあくまでも大学独自の規定であって、大学設置基準では124単位以上となっています。
さて、この「大学」ですが、短大や専門学校を卒業している人は、3年次に編入することができます。最近は3年制の短大・専門学校卒業者を大学の4年次に編入させる大学もありますが、ここでは放送大学を例にとって、「3年次編入」としておきます。
短大はあくまでも「短期の大学」であって「大学」ではありません。そして「専門学校」は専修学校の専門課程のことを指しますが、やはり「大学」ではありません。しかし、大学の3年次に編入できるということは、現実問題としては、短大や専門学校を卒業した者は、「4年制大学の2年次を終え、62単位を修得した者と同じ」ということになります。つまり、短大と専門学校は、大学の1年と2年のカリキュラムとイコールの関係にあるといって構いません。
そして例えば短大や専門学校を卒業した人が放送大学教養学部の全科履修生に3年次編入した場合、あと62単位を修得すれば、合計124単位を修得したことになって、卒業の認定を受けることができ、晴れて学士(教養)の学位記を受領することができます。
つまり、大学の1年と2年を満たした人は、大学で3年と4年のカリキュラムを経れば大卒となれるのです。
ここまでの理解は大丈夫ですよね?>みなさん
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短大・専門学校卒ナースがもっと簡単に看護大学卒になれる本 増補改訂3版 ─2週間で書ける学修成果レポート!大学評価・学位授与機構で学士(看護学)をめざす
さて、ここで例示するのは、「放送大学の3年次編入」です。
放送大学は入試がありません。編入に関しても同様です。
短大・専門学校卒の人、つまり「大学の1年と2年のカリキュラムを経た人」が、放送大学に編入学した場合、全科履修生の3年次に編入できて、所定のカリキュラムで所定の単位を修得し、それが62単位に達すれば、編入前の単位と合わせて124単位になり、晴れて卒業となります。
一方で、もし同人が、全科履修生ではなく、選科履修生・科目等履修生など、正規の学士課程ではない学生だった場合、62単位を修得しても卒業の認定はなされません。しかし、その後、同人が放送大学の全科履修生に編入学したら、今度は1単位も修得することなく、もう2年間の在学だけで卒業の認定を受けることができます。
つまり、大学卒業というのは、「短大や専門学校を卒業した人が、課程や学生の種別を問わず、62単位を修得した者のこと」とも言える訳です。62単位さえ修得すれば、後追いで全科履修生になればいいってことです。ただ、この「後追いで全科履修生」というのは、学生の努力や学力や偏差値に関わるものではなく、単純に「入学申込み用紙の全科履修生の欄に○を記入して金を払うだけ」の話です。申込み用紙と入学金の有無だけで、大学が「卒業」と認定し、卒業式に呼ばれ、学位記が授与されるのです。
何度も言いますが、選科・科目履修生と全科履修生は、入学金の額の違い、放送大学側の書類の処理の違いだけであって、本人の優秀さや努力とは全く関係がありません。
さて、ここで大学評価・学位授与機構の学位授与事業についての話をします。
大学評価・学位授与機構は、短大や専門学校を卒業した事実を「基礎資格」として取り扱います。この基礎資格には第1区分から第3区分までありますが、2年制の短大・専門学校卒業者なら「第1区分」と称します。
この第1区分の基礎資格を持った人は、既に62単位を修得しているものとみなされます。そして次に大学で62単位を修得することによって、短大や専門学校の62単位と大学の単位を合わせて124単位となります。簡単な足し算です。
大学評価・学位授与機構の学位授与事業は、文学とか社会学とか理学などの専攻分野に分かれていて、例えば看護学に関していうと、このトータル124単位のうち、看護の専門科目は40単位以上、関連科目は4単位以上、この専門科目と関連科目を合わせて62単位以上などといったいろいろややこしい要件をクリアし、かつ学修成果と呼ばれる卒業論文相当のレポートを提出して試験に合格した場合、学士(看護学)が与えられます。

『新しい学士への途』の看護学のページより
放送大学など、4年制大学の「卒業」の認定と比べると、大学評価・学位授与機構の学位授与事業の学士認定は、その手続において大きく違わないことがわかります。それどころか、放送大学が「短大・専門学校の62単位」+「大学で62単位修得」のプロセスで卒業を認定するのに、大学評価・学位授与機構はそれに加えて「学修成果」と「試験」というハードルが残っているのです。
4年制大学では卒業論文を課さないところも多くなっている現在において、単位の他に学修成果を課すということは、学位授与機構の学士が「大学卒業と同じ」を通り越して、「大学卒業よりも高度だ」ということになります。
さて、学位授与機構の学士について「大学卒業ではない」とか、私の著書について「看護学士は看護大学卒ではない」と言い切っている方にお聞きしたい。
だ・か・ら、何なのでしょうか?
「卒業式」というセレモニーが無いから「大卒ではない」のでしょうか。
それじゃ、東日本大震災の影響で2011年の3月に卒業式を中止した大学の卒業生は大卒ではありませんね。
学位授与機構が「大学」ではなく、「独立行政法人」だから大卒ではないのでしょうか。
それなら国立看護大学校は大学の看護学部相当の教育と学位授与機構の看護学士が取得できるはずですが厚労省の一教育機関でしかないから大卒ではありませんね。
我が国においては、人事院の俸給規定、大学院入学資格、関係法規などで、いわゆる大学卒業と4年制の専門学校(高度専門士)と学位授与機構の学士は全て4年制大学卒業者と同等と定めています。
これを「大学の卒業じゃないから」という、稚拙な理由で「大卒ではない」などと言い続けるというのは、愚かだと思うのです。
最後に、たとえ話をしておきます。
生まれたときに、男性器があるから男性として育てられた子どもが、大きくなって遺伝子検査をしてみたら女性だった場合、いわゆる性転換手術をして戸籍上は女性として生活を送っているというケースがあります。
この人について「性転換をしているから本当は男だ」と言い張る人がいたら、バカだと思いませんか。
柔道のポイント制度に「一本」がありますが、これは「技あり」を2つ取ることでも「合わせ技一本」と呼んで「一本勝ち」と言います。これを「合わせ技一本は本当の一本じゃない」と言い張る人がいたら、バカだと思いませんか。
個々人の能力を見る訳でも無く、ただ「卒業」と「学士」の字面が違うだけで、我が国の法律で正式に認められた学士を「大卒じゃない」と言い切る人がいたら、やっぱりバカだと思いませんか。
そこでまとめです。
大卒だろうと学士だろうと、それはひとりの人間が経験した学修経験です。看護業界において、看護師としての能力について批判するならともかく、その学修経験を、他人のあなたが「大卒じゃない」と述べたところでどうなるのでしょうか。大卒じゃなかったらどうだというのでしょうか。学位授与機構の学士は全く無意味なものなんですか。少なくとも大卒相当の学修経験と卒論相当のレポートがあるのに、本人の努力とは全く関係が無い、大学側・学位授与機構側・文科省側の都合で卒業と認めないんですか。卒業そのものではないけれど、大卒相当であると法律まで作ってあるのに、それをなぜ大卒ではないと無責任に言えるのでしょうか。
私は法学部を卒業した者として、高等教育制度を研究している者として思います。少なくとも我が国の法律で認められた正当な学士を持っている人は全て大卒であり、その学士の専攻分野・区分に相当する学部を卒業した者としてみなして当然です。そうみなせない理由があるというなら、きちんと議論を挑んでいただきたいと思います。ただし、質問したり議論を挑まれる時は、匿名お断りです。最低限、お名前と出自をはっきりさせた上でメールを送ってください。
こちらは私の運営する学位授与機構解説サイトです。
大学評価・学位授与機構解説ページ GAKUI.NET