2016年03月03日

ウィッツ青山学園高校の不正問題について

昨年12月10日に就学支援金の不正受給についての問題。
そして本日3月3日はスクーリングのあきれた実態について、テレビ朝日のワイドスクランブルに呼ばれてコメントしてきました。
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リポーターの東富貴さんと私

■ウィッツ青山学園高校のスクーリングの実態

通信制高校は、通学課程の高校へ行けなかった人たちが、どうにかして学び、卒業の認定を受けるために利用できる教育施設です。通信制高校といえど、「高等学校」とか、「教育施設」というからには、言うまでもなく、高校レベルの教育を行う施設でなければいけません。
だから、高等学校である以上、開設される授業は文科省の学習指導要領にしたがって行わなければなりません。通信制高校とはいえ、通信(レポート課題の添削)による学習だけではなく、スクーリング(面接授業)と呼ばれる、生の授業も一定の割合で受けなければなりません。
通信制高校のスクーリングは、高校の教員免許を有する専門の教諭がいて、検定済の教科書を使って授業が行われます。授業は学校の施設で行います。
もちろん、学校内・教室内での座学よりも、例えば映画を見るとか、博物館を見学することで理解が深まることもあります。だから、学校という施設を出て、学校外の施設を訪れるとか、副教材として様々なものを利用するのもアリだと思います。
しかし、報道によれば、ウィッツ青山学園高校では、スクーリングと称するバスツアーが企画され、以下のように単位を認定する、怪しいカリキュラムとなっていたようです。

●テーマパークに遊びに行き、お土産を購入し、釣り銭を計算する⇒数学の単位
●バスの中で邦画を鑑賞⇒国語の単位
●バスの中で洋画を鑑賞⇒英語の単位
●忍者博物館の見学⇒歴史の単位
●忍者博物館でなぜかスポーツ選手が2時間講演⇒体育の単位
●神戸の夜景を鑑賞⇒芸術の単位
●サービスエリアで食事⇒家庭科

この話を聞いて、私はお笑い芸人のネタかと思うほど呆れました。これなら、スマホをいじっているだけで、「情報処理の単位」とかグーグルマップを駆使して遊びに行けば「地理」とか、もう何でもアリという状況になります。
ワイドスクランブルが取材した40代男性によれば、このバスツアーは年に2回ほど実施されています。
1回は日帰り弾丸ツアー。もう1回は宿泊を伴うものだそうです。
報道された日帰り弾丸ツアーの日程表をみると、東京に集合し、三重県の本校へ向かい、再び東京に戻る
というスケジュールです。拘束時間はおよそ12時間程度ですが、三重県の本校の滞在時間は日程表では2時間ですが、実態はわずか30分。勉強らしい勉強はしていません。


■スクーリングは3年で74時間

高校通学歴の無い人が、通信制高校を最低限の努力で卒業したいと思った場合、卒業要件は以下の通りになります。

●修業年数3年間(3年以上在籍せよ)
●修得科目74単位
 ・レポートの作成・提出・試験
 ・スクーリングの出席
●特別活動30単位時間

そして、この74単位を取るためには、少なくとも3年間で74時間のスクーリングが必要となりますから、1年あたりにすると約25時間です。ウィッツ青山学園のような広域通信制高校の場合、三重県伊賀市の本校で、このスクーリングを受けなければならないので、例えば1日5時間のスクーリングを行おうとすれば、月曜から金曜まで、しっかり5日間を要します。移動時間を考えれば、日曜日に学校に着いて、翌月曜日から授業を行い、金曜日に修了し、土曜日に解散ということになりますから、1週間をまるまる。使わなければなりません。

しかし、ウィッツ青山学園は、日帰り弾丸ツアー1回、1泊ツアー1回で済まします。移動時間も映画を見る、サービスエリアの食事は家庭科とするなど、こじつけのアリバイ授業を行って、極めて合理的に、都合よく解釈した「カリキュラム」を策定していたということになります。


■通信授業はアルバイトの人が代わりにやっていた?

ワイドスクランブルが取材した卒業生によれば、本来、教科書を見ながら自ら作成しなければならないレポート課題は、自分以外の誰かが代わりにやっていたと証言しています。少なくとも、この卒業生は、一度もレポート課題をやらず、上記のスクーリングだけで卒業証書を受け取ることができたといいます。
実はこの辺りのからくりは、もっともっとえげつない、巧妙な仕掛けがまだ別にあるため、番組では追跡取材するそうです。


■コンプレックスビジネス

この言葉は私が考えて、ワイドスクランブルのディレクターに話したところ、面白い新語として使われました。…が、よくよくネットで検索してみると、既に「コンプレックス産業」という言葉がウィキペディアに載っているので、私のオリジナルではないことに、今気づきました。すみません。

私が定義するコンプレックスビジネスとは、「人が恥と思うことを解決してくれるサービス」のことであって、例えば美容整形外科とか結婚相談所とか、破産事件を扱う法律家など、仮にそこに嘘や誇大広告があったとしても、なかなかクレームをつけにくい、公になりにくいビジネスのことを指します。
今回のケースは、まさに学歴がない人の劣等感につけこんだビジネスで、「就学支援金を使えばタダ同然」、「ほとんど何もせずに簡単に高卒資格が取れる」、「年に2回のバスツアーに参加するだけ」といううたい文句で入学した人は、恥ずかしくて苦情も言えませんね。
「学力が何も向上しなかった」とクレームしても、「それはあなたが勉強しないから」とか「高卒になれただけ良かったじゃん」の一言で、反論できなくなります。

しかし、本質的な問題として、学力も無いのに、学習経験すら無いのに、高卒を名乗るっておかしくありませんか。
企業の求人票に「高卒以上」と書いてあるのは、「高校に3年間通うことができた継続させる力」や「いろんな科目を勉強して、そこそこの点数を取ることができた学力や経験値」などを評価されるからです。企業にしてみれば、まさかレポートを作成していたのは他人で、スクーリングはこじつけバスツアーだったとは思わないでしょう?
これって、原付バイクの免許しか持っていない人が、お金を払ったら誰かが代わりに教習所で受けてくれて、いつの間にか普通免許にアップグレードされたというくらい、恐ろしい話ですよね。

私は、学習について、楽をすること、合理的に行うことは大切だと思います。
だけど、一定のレベルを求められる学習について、都合よく解釈した「ほぼインチキ学習」は、生徒の将来に何のメリットもありません。違法じゃなければなんでもアリ。儲かればいいという短絡的な学校経営は許してはいけません。
posted by まつもとはじめ at 23:19| 神奈川 | Comment(3) | TrackBack(0) | 高等学校/高卒認定試験 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年05月28日

高卒認定試験合格は高卒資格ではないのか

この半年の間に、ちょこちょこ、マスコミに出演する機会があって、おかげさまで忙しくやっております。

実は3月に共同通信社から取材を受けまして、この3月〜5月の間に、全国の地方紙、おそらく数十紙に私の記事が掲載されました。

私の地元で入手できたのは神奈川新聞で、こんな感じで掲載されていました。
■神奈川新聞の記事

この記事の中で、「高卒資格を得る選択肢は」という見出しがあり、その方法のひとつとして高等学校卒業程度認定試験、つまりかつて大検と呼ばれていた、受験だけで高卒資格を取得できる方法を紹介しました。

ところが、この記事に物言いが付いてしまいました。
「高卒認定試験に合格しても、高校を卒業したことにはならないぞ」というもの。

この手の議論は、実はよくあります。

「高卒認定試験に合格しても、高卒にならないので価値はない」という主張です。

学位授与機構の学士については、ここで散々申し上げました。
■なぜ学位授与機構の「看護学士」は大学の「看護学部卒」と同じなのか

だけど、高卒認定試験についても同様の議論をしつこく述べてくる人がいて、共同通信社の担当記者は誤まった情報を配信したのではないかと疑われています。

しかし、たいていこの議論をふっかけてくる方は、教育行政も教育法も調べずに、自分の思い込みや、狭いコミュニティ内での常識を振りかざす場合が多いため、いちいち説明するのに苦労します。

柔道でいえば、「技あり」を2回取る「一本」と、一発で決める「一本」は違うみたいな話でしょうか。
野球でいえば、ランニングホームランは本当のホームランではないという話でしょうか。

そんな方々にいちいち説明するのが面倒なので、こんな動画を制作しました。

■高卒資格と高認試験2014.5.20

直接視聴する


そもそも、「高卒資格」なんてものは存在せず、私たちが「高卒資格」と呼んでいるものは、法律的には「大学入学資格」というものであって、この大学入学資格のことを、分かりやすいから便宜上「高卒資格」と呼んでいるだけなのですよね。

まぁ、そんな常識を覆すようなことをするのがジャーナリストなり、専門家の仕事だと思っていますので、少々の批判は甘んじて受けます。参考にしていただければ幸甚です。
posted by まつもとはじめ at 04:02| 神奈川 ☁| Comment(2) | TrackBack(0) | 高等学校/高卒認定試験 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年03月14日

「高校中退者多様な進路」山陽新聞2014年3月14日朝刊に掲載

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共同通信社から取材申し入れがあり、高卒認定について説明させていただきました。

同社は全国の地方紙に記事を配信しているようでして、山陽新聞以外の全国地方紙の文化欄に掲載されるそうです。

みなさんの地元の新聞に配信されたら、どこの新聞のいつの号か教えていただければ幸甚です。

上記の画像はFacebook友達の山下さんからのものです。

これならできる!高認合格“超基本”テキスト―中卒・中退・不登校からの高卒資格取得 [単行本(ソフトカバー)] / 松本 肇 (著); ぼうご なつこ (イラスト); オクムラ書店 (刊)
これならできる!高認合格“超基本”テキスト―中卒・中退・不登校からの高卒資格取得
posted by まつもとはじめ at 23:59| 神奈川 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 高等学校/高卒認定試験 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年08月23日

外国人学校の高校無償化の問題点

民主党が政権公約として掲げてきた高等学校の授業料無償化について、2010年4月から実現されていますが、この「高等学校」に外国人学校を含めるかどうかについて私には意見があります。

報道などによると、特別永住権を有する北朝鮮出身者の子孫、つまり在日朝鮮人を対象にした、朝鮮学校高級部を現行法上の高校としてみなし、無償化の対象とすべきか否かについて、さまざまな理由から反対意見が出されていましたが、この私も、現行法上のままでの無償化の対象とすることには反対の立場です。

  ↑ ↑
賛成でも反対でも、ここだけ読んで感情的にはならないでください。特にツイッター経由の方で、冒頭部分だけ読んで反応される方がいるので、気をつけてください。

各種学校と専修学校
朝鮮学校高級部について、私は全てについての調査をしているわけではありませんが、例えば神奈川県横浜市神奈川区の神奈川朝鮮中高級学校は、学校の種別としては「各種学校」です。各種学校は、都道府県知事の認証する正規の学校区分です。

一方で、我が国には各種学校の上位にあたる「専修学校」という学校区分があり、更にこの専修学校には、専門課程、高等課程、一般課程の3つの区分があります。
このうち、「高等課程」で修業年限が3年以上の課程については、修了者に大学入学資格を与えることから、事実上の高校に該当し、高校授業料無償化(または助成制度)の対象となります。
現在、各種学校と専修学校の違いは、主に修業年限や授業時数の違いなどであることから、当該朝鮮学校も専修学校に昇格させ、当該高級部を3年制の高等課程にすればよいだけなのですが、神奈川県にこの事情を質問したところ、学校教育法82条の2に「我が国に居住する外国人を専ら対象とするものを除く」という例外規定があるため、専修学校に昇格させることができないという回答を得ました。
つまり、現状において朝鮮学校高級部は、各種学校であり続ける限り、修了者に大学入学資格が付与されない問題もあいかわらず存在します。大学入学資格を付与できないまま、国が無償化の対象としてしまうと、大学入学資格を付与できないのに学費を助成するという矛盾が生じます。よって、現行法上のままでの無償化は反対です。

このような事情を勘案すると、無償化云々の話ではなく、まずは学校教育法82上の2の例外規定を削除する方が先決です。この規定を削除すれば、当該朝鮮学校高級部が専修学校高等課程昇格の途を選ぶことができる訳ですから、正規の高等専修学校になります。

しばしば、本件をめぐる議論の中で、本国の指導者やその政治手法、国交の有無を挙げ連ねて批判することがあります。しかし、本来は政治と教育とは無関係ですし、そこに通学する生徒たち(15〜18歳)は本国と我が国のいずれの選挙権もなければ、20歳を満たしていないのだから日本における制限能力者であり、まして国籍を有する外国の指導者の動向について責任を負う立場でないことは明らかです。

私は朝鮮学校の学校区分についての改正が無く、上述の政治的な問題で大学入学資格も無償化の対象にもならないというのは、ただ彼らの被差別感情を煽るだけで、決して良いことだとは思っていません。

以上のことから、学校教育法82条の2の例外規定を削除すべきだと思っております。

学校教育法
(目的・修業年限・授業時数及び定員)
第82条の2 第1条に掲げるもの以外の教育施設で、職業若しくは実際生活に必要な能力を育成し、又は教養の向上を図ることを目的として次の各号に該当する組織的な教育を行うもの(当該教育を行うにつき他の法律に特別の規定があるもの及び我が国に居住する外国人を専ら対象とするものを除く。)は、専修学校とする。
 一 修業年限が1年以上であること。
 二 授業時数が文部科学大臣の定める授業時数以上であること。
 三 教育を受ける者が常時40人以上であること。
posted by まつもとはじめ at 19:06| 神奈川 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 高等学校/高卒認定試験 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年08月14日

高等学校「早期卒業制」の検討は不要



ニュースで、スポーツや芸術で秀でた能力を持つ人向けに、2年間で高校を卒業させ、大学入学資格を付与させようという検討が始まっているそうです。

高等学校の卒業要件は、3年間の在学、74単位の修得、30時間の特別活動です。
この原則について、修業年限を2年にするとか、スポーツや芸術の活動を単位として認めるなど、機制を緩和することで、高校卒業を認定し、早期の大学入学や留学を促そうという動きがニュースになっています。

しかし、私はその検討については、全く必要性を感じておりません。

この動画ニュースを見ると、「才能のある高校生が海外で修行するためには、高校を中退しなければならず、才能を開花させることなく帰国してしまった時に、高卒の資格が無いことが不安」とあります。

このような高校生のために、私は2年間の通学で高卒資格を与える政策を導入する必要など、全くないと思っています。むしろ、何ら改革することなく、現行の制度をそのまま活用すれば良いだけです。

具体的には、現行の高等学校卒業程度認定試験を受験すれば良いのです。

「高校を2年間の通学だけで卒業資格を与える」ということは、少なくとも高校の卒業程度の学力は有しているはずで、この学力を持って8〜9科目の、高卒認定試験を受験すれば、1科目くらいの合格が達成できるはずです。
そして1科目の合格があれば、在学した高校の単位を利用して免除申請できるため、現在の制度の中で十分に、そしてかなり簡単に高卒資格が取得できるはずです。

もちろん、高校卒業と高卒認定試験合格はイコールではありませんから、「あくまでも高卒にこだわるぞ」という高校生は高卒をめざせば良いのですが、その名も「高等学校卒業程度認定試験」(=高卒と同じ程度)と銘打っている試験を運営している文科省が、イレギュラーな生徒たちのために、実質的な「2年制高校」を設置すべきではないと思うのです。

類まれな学力(例えば理科・数学系)を有する生徒を早く大学へ進学させる意味はわかりますが、スポーツや芸術分野で敢えて大学へ進学させる必要など、私はないような気がします。
あいにく、個別のケースは知らないので何ともいえませんが、ここで高校の制度をいじるべきではないと思います。

一方で、朝鮮学校高級部(朝鮮高校)の、法令上の高等学校としての認定がいつになっても始まらず、高校無償化(助成金)の問題がいつまでもくすぶっているというのも被差別感情を煽るだけなので、こちらの解決の方が急がれるような気がします。

これならできる!高認合格“超基本”テキスト―中卒・中退・不登校からの高卒資格取得 [単行本(ソフトカバー)] / 松本 肇 (著); ぼうご なつこ (イラスト); オクムラ書店 (刊)
posted by まつもとはじめ at 23:55| 神奈川 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 高等学校/高卒認定試験 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする