2018年07月15日

真夏日に「校舎を80周走れ」 ← 殺人未遂と同義です



テレビ朝日のニュースを聞いて驚き、ハフィントンポストの記事で更に驚きました。

「校舎を80周走れ」30度超えの真夏日に顧問が指示。熱中症で生徒が搬送
滋賀県大津市の南郷中で、ソフトテニス部の男子生徒が男性顧問から校舎の周りを80周走るよう指示され、ランニング中に倒れた。生徒は病院に運ばれ、熱中症と診断された。

市教委が7月14日、ハフポスト日本版の取材に対して明らかにした。

市教委によると、男性顧問が7月12日午後4時ごろ、練習中にミスを繰り返した男子生徒に、罰として「校舎の周りを80周走れ」と指示した。

生徒は9周目の途中で倒れ、工事作業員に発見された際、意識がはっきりしない状態だった。けがはなかったという。


気象庁によると、大津市の気温は当時、30度を超えていた。

校舎は1周約230メートルで、80周走ると約18キロの距離に当たる。監視役はいなかった。

男性顧問は学校側の聞き取りに「大変重大なことを起こしてしまった」と話しており、ソフトテニス部の顧問から外された。過去にも、練習中にミスをした生徒に校舎を何周も走るよう指示しており、保護者からクレームが寄せられていたという。

同校の教頭や男性顧問らは、当日に病院を訪れて生徒と保護者に謝罪。翌13日には、ソフトテニス部を対象に保護者会を開き、校長が経緯を説明した。

県・市教委は今後、男性顧問から聞き取りをした上で処分を検討する。

市教委はハフポスト日本版の取材に、「体罰を超える許されない行為だと認識している。二度と繰り返されないよう、同校や市内の小中学校の部活に対して厳しい指導をしていく」と話している。


この記事ではあくまでも「事故」ないしせいぜい「体罰」としてしか触れられていないが、テレ朝の報道やハフポストの記事が真実であるとすれば、管理者が「生徒は死ぬかもしれない」というリスクを厭わなかったという意味では、殺人未遂に等しいといえる。過去にも同様のパワハラ的な罰が行われたとすれば、学校ぐるみの犯罪であったと断罪すべきである。

通常、スポーツを行う場合、当然のことながら、参加者には可能な限りの安全配慮をする。
剣道なら防具、野球ならヘルメットやレガース、ボルダリングならハーネス(命綱)や柔らかいマットなど、「失敗すること」や「ケガをすることが前提」で様々な準備がなされる。

しかし、夏の暑い時期、炎天下で運動をさせるという行為はどうか。暑さを根性で乗り切れるなどという時代はとうに過ぎ、熱中症で死亡事故へ発展するというのがもはや常識なのである。

2015年8月、高校スポーツでは有名な私立高校で、柔道部の部員(16歳)が炎天下で走らされ、熱中症から多臓器不全となって死亡した。

柔道部活中に熱中症、死亡 桐蔭学園高1男子(日刊スポーツウェブサイト)

この桐蔭学園は、桐蔭横浜大学を系列に持ち、スポーツ健康政策学部では、科学的・医学的な観点からスポーツ健康科学の研究が行われているはずで、熱中症の研究で有名な教授がいるのにも関わらず、こんな事態が起こってしまった。

ところで、湿度・日射・気温などから熱中症リスクを計算できるウェブサイトは以前から公開されており、誰もが閲覧できるようになっているため、夏場で気温が「30度」というだけで警戒しなければならないことは、もはや常識なのである。まして、小中高生は体が未発達であるし、指導者の理不尽な指示に反抗できるほどの知恵もない。そのような思春期の子どもたちを見守る学校運営者には十分な安全配慮義務が求められる。

環境省熱中症予防情報サイト
今回の滋賀県のケースでは、この暑さ指数によれば、30分おきに水分補給や休息を取らねばならぬとある。もう気温が30度となった瞬間に、命に関わるおそれがあると見なし、軽めの運動で済まさなければならない。
熱中症に関わるこの情報を知っていて「80周走れ」と命じたのであれば、それは殺人未遂ともとれる行為であり、知らないとすれば運動部の顧問としての資質を問われることになる。どちらにしても、命がけの部活動なのである。

私は最近起こった日大アメフト部の悪質タックル問題や、至学館大学の女子レスリング部のパワハラ問題について、多くの報道がなされ、この私がバイキング(フジテレビ)に呼ばれるほどの大きな社会問題ではあると思うが、それでも死者が出ていないだけマシだと考える。実はテレビで大きく報道されない、「生死にかかわるパワハラ」が全国各地で起こっていることに気づかなければならないと思う。
posted by まつもとはじめ at 01:52| 神奈川 ☀| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年07月05日

息子を東京医科大学へ不正入学「文科省局長を受託収賄容疑で逮捕」東京地検特捜部

■再び文科省で不祥事

ここ最近、森友学園、加計学園、記者へのセクハラ事件、日大アメフト、至学館大パワハラなど、不祥事関連で慌ただしかった文部科学省ですが、また出ましたね。

今回は国の私立大学支援事業の選定の見返りに、自分の子どもを東京医科大学の入試で不正に加点して入学させるという行為が発覚しました。

事件の概要については朝日新聞の記事を見ていただくと分かりやすいと思います。

文科省、佐野太局長を解任 受託収賄容疑で特捜部が逮捕

この記事によると、東京医科大学が文科省の官僚の息子を不正に入学させることによって、5年間で最大1億5千万円が助成されるというものだそうです。ただし、大学は目先の1億5千万円欲しさに不正に入学させたというよりは、「今後も文部科学省とよろしくやっていけること」の方が大きいでしょう。

そう、森友や加計を見れば明らかなように、権力を握っている役所の人たちや、その役人をコントロールできる人たちに忖度しよう、便宜を図ろうという気持ちは自然と湧いてくるものだし、一般に世の中は「持ちつ持たれつ」の関係でやっていくのは悪くありません。しかしそれが受託収賄を構成してしまうのであれば、決して褒められることではありません。

本来は適切に法を執行する立場の役人が、本来は選ばれてはならない大学なのに私立大学研究ブランディング事業を行う東京医科大学を選んでしまい、本来は日本の医療を背負っていくべき若者を教育する立場の医科大学が、本来は合格させてはいけない学力の乏しい若者を合格させてしまったのであります。

近年、少子化の影響から、大学は定員割れを起こしてしまうため、大学入試の方法は多岐に渡っています。学力試験のみを行う一般入試の他に、一般推薦、指定校推薦、AO入試入試など、学力が伴っていなくても、受験生の性格や将来性などをくみ取って合格させることがあるから、かつてタレント親子が引き起こした「替え玉受験」のような不正は起きにくなってきました。このような加点・減点の基準があいまいな推薦枠であれば、実際は不正な加点があったとしても、表面化しにくいのです。したがって、20年前は不正入試とされた方法が、今は様々な推薦入試によって適正となってしまったのです。


■医学部へ不正入学させたことは大きな罪

しかし、一般的な文系学部と医学部とはだいぶ違います。
卒業すれば、国家試験を経て90%は医師になれるという医学部においては、入学後6年間の授業や実習に耐えられるか否かという問題も出てきます。東京医科大学の今年度の入試は3535人が受験、214人が合格、倍率は16.5倍です。大学は「これだけの倍率をくぐり抜ける点数を叩き出せる学力があった」という前提でカリキュラムを組むのですから、不正に入学した場合は落ちこぼれる可能性が高いということになります。

一般に「落ちこぼれ」と呼ばれる人は、補習校へ行くとか、必死に勉強するなど、自らの努力で学力が向上する可能性があります。ただ、一般的な落ちこぼれは、入試で合格点を叩き出した人が、遊び呆けてしまって成績不振になるだけであって、もともと合格するだけのポテンシャルを持っているのですからV字回復の期待ができます。問題は入試で不正をした人物が落ちこぼれた場合、V字回復どころではなく、基礎学力を高めるところから始めなければならないのです。

そもそも能力が無いのにポジションを与えられてしまった人が、能力が向上して他の学生と同じように学ぶことができるものでしょうか。可能性ゼロとまでは言いませんが、普通に考えればダメに決まっているじゃないですか。

それでも、友人や教授たちの配慮があって、何とか医学部卒業に漕ぎ着け、予備校に通ってどうにか医師国家試験もパスしたとします。
だけど、そんな人が研修医を経て、本当に医師としてやって行けるのでしょうか。

私は総合病院で働いているキャリア10年以上の医師にインタビューをしたことがありますが、そんな人は目の輝きが違います。医学がたまらなく好きで、食事をしている時も頭の中は治療方法のことで頭がいっぱいになってしまっている人でした。
逆に、医師免許は持っているものの、悪い意味でサラリーマン的な医師を取材したこともありますが、ビックリするほど知識が乏しく、権威を振り回しているだけという残念な人でした。

医師は、看護師などのコメディカルと多く異なる点として、医療行為ができることが挙げられます。医療行為は医師が自ら必要だと思えば、合法的に切ることも投薬もできます。つまり、医療行為であれば、医学的に手順や方法が正しいのであれば、人を死なせても責任を問われない職業なのです。だからこそ、医師は人に尊敬されるし、勤務医であっても給料が高いのです。


■能力の低い人にポジションを与えることの危険

以前、京都大学ですさまじいカンニング事件がありましたが、同じ要領で東京大学の文系学部の入試でカンニングして合格・入学した人がいたとします。文系学部なら、人の生死に関わる国家資格とは無縁なので、卒業に必要な単位を得られる楽勝科目ばかりを選んで履修すれば、学力が乏しくても卒業できるかもしれません。
そんな彼は東大へ行ったことで、他の三流私大に通うよりは高度な勉強をする機会があったかもしれませんが、本人の基礎学力が低いという事実は変わりません。だけど、東大を卒業したという事実はもう消されることはないでしょうから、比較的有名な一流企業に就職できたり、その企業の中でも東大卒ということで重要なポジションを任されることがあります。

企業にしてみれば、「必要なときに必要な文献を収集し、様々な問題を適切に判断し、マルチタスクもこなせる人材で将来の幹部候補」というイメージがあるから東大卒を採用します。しかし、当の本人は「東大卒であれば他人と同じ仕事をしても給料が高いはずだ」という、実は優良誤認させるための手段として東大卒をアピールしているだけなので、会社としては不適切な人材を高い給料で雇用したことになります。
そう、彼を雇用した企業は、高い給料で人を雇い入れたのも関わらず、業績が低くなってしまうのです。

彼が現れなければ、三流私大の卒業生を雇い、彼らに研修や教育を施すことで、適材適所の経営を行うことができたのに、学歴という名の能力偽装に騙されてしまうのです。たいへんな機会損失です。

そう、今回の医学部不正入試は、能力の乏しい1人を合格させたというだけではなく、1人の合格レベルに達したはずの若者が不合格となって排除されてしまったのが問題なのです。本来は合格していた人物が医師になって助かる命や人の健康と、不正に合格した彼が医師になって人に危害を与える危険性を考えると、社会的に大きなマイナスとなるのです。


■文部科学省の官僚ゆえに罪は大きい

私は今回の事件について、受託収賄罪そのものよりも、不正入試に加担したことの方が大罪と考えています。
人の生死に関わる分野で、著しく学力の劣る者に資格や権力を与えてしまうというのは、実に恐ろしいことになりませんか。
学力が劣るということは、彼は自分よりも優秀な人材を蹴落とすことに躍起になり、足の引っ張り合いとなるのです。
このような事態にならないよう、一定の基準に大学に医学部を任せ、その医学部が定める基準に合致した入試問題を出題し、志願者を選抜した上で医師を養成するのです。

こう考えると、一周して森友学園、加計学園、記者へのセクハラ事件、日大アメフトタックル、至学館大パワハラ問題に再び行き着きます。
文部科学省で起こったこれら一連の問題は、共通して「権力を持った人やその周辺の人たちが、権力を傘に様々な悪事を企てた」ということになります。

こうして表面化するということは、まだ正義漢のある関係者が告発できるというところに一縷の希望があるということだと思います。
教育に携わる人たちは、膨大な予算に目を曇らせることなく、ぜひ適切な学校運営にあたっていただきたいものであります。



posted by まつもとはじめ at 08:59| 神奈川 ☔| Comment(1) | 教育機関の不正・犯罪 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする