2018年05月24日

失態をさらけ出したアメフト部不祥事会見─日本大学の広報担当が愚かな理由

日大アメフト部のタックル問題については、マスコミが大きく報じているので、あえて私が述べるべき新しい意見やコメントはありませんが、昨日の会見をネットの生中継で見ていて、日大の広報が最低な振る舞いをしていたので言及しておきます。

この会見は、言うまでもなく、「日大のアメフト部の選手が、他校の選手に反則となるタックルをして、怪我をさせたこと」についての釈明会見であります。真実がどうかはともかく、この会見の目的は「当該選手に行き過ぎがあったことは認めつつも、故意ではない」ということや「被害選手には謝罪しつつも、組織的な反則行為ではない」ことを説明するためのもので、いわばテレビ・新聞・インターネットメディアなどを通じ、大学のイメージを回復するためのイベントです。

その大切なイベントで、広報担当の職員がマスコミ各社に対し、質問を遮るとか、会見を切り上げるなど、失礼な言動を行いました。



ふだんは大学の良さや教育の素晴らしさを伝える私の立場からすれば、この会見で司会者となった日大の広報は最低です。
私は会見の現場にいたわけではなく、画面のこちら側で生放送を見ていただけですが、それでもこの広報職員は日大にとって、再び不祥事の火種になるので、もう二度と広報を名乗って出てくるべきではない、そして教育者という感覚も無ければ経営感覚も無いに等しいと評価します。



そもそも日大アメフト部の関係者は、暴行罪・傷害罪に値する事件を起こしており、「加害者」という立場であります。だから少なくともマスコミに対して憤る側ではありません。
また、日大は全国から7万人の学生を預かるマンモス校ゆえに、多額の私学助成金を受け、授業料を受けて教育サービスを行う公益法人であるのだから、少なくとも社会に対する説明責任を有します。
そして、広報としての基本的な職責は、「大学へ進学しようとする若者に、日大の魅力を伝えることで、受験者を増やし、学生数を確保する」ことにあります。一方、記者会見場にいるマスコミ各社の関係者は、記者であるだけではなく、受験生となる子を持つ親である可能性もあるし、メディアの拡散力もさることながら、友人・知人に口コミで記者会見の場にいた取材者・証人として、良くも悪くも日大の評判を伝える立場にもなりえます。

この会見を見る限り、日大は不祥事が起こったときの危機管理意識が薄く、不祥事の原因を究明して再発防止を検討することよりも、ひたすら鎮静化させることに注力していることがわかります。つまり、教育サービスを行う場で、何か問題があっても、明らかにしようとするコーポレート・ガバナンスが欠落しているということを意味するのです。
一方で、会見場で記者からの質問の内容を不当にコントロールしようとしたり、会見を終了しようとする姿も広報担当であるがゆえに見苦しく見えます。確かに記者会見では質問が重複したり、記者の質問が的を射ていなかったり、複数の質問を長い時間ぶつけるケースもあるので、注文をつけたくなる気持ちもわかりますが、それは「1人1問としてください」、「質問は簡潔におねがいします」、「質問は1分以内に」など、お願いベースの正しいコントロールの仕方もあるでしょう。しかし、それもできていない。面倒くさそうに、早々と会見を切り上げたくて仕方のない様子は、画面を通じると、より悪辣に映ってしまいます。

そして記者から司会の仕切りについて、「日大のブランド(イメージ)が落ちてしまう」と注意されると「落ちません!」と言い切る。
おいおい、ブランドイメージって、大学側でコントロールできるものじゃないでしょう?

本来、広報とは、各種メディアに対して、悪いイメージを持たれないよう、または良いイメージを報じてもらうための部署です。
だから、今回の不祥事について、会見を行うのであれは、「このような事件が起きたことは残念」、「しかし情報が錯綜しており、原因の究明には時間がかかる」、「結果としてケガをさせてしまったので、被害者の方には謝罪し、回復をお祈りする」、「大学は一丸となって再発防止に取り組む」と主張しなければなりません。嘘でもそう言うべきなのです。広報ならば、マスコミのしつこい質問攻勢があったとしても、不用意な発言をして切り取られて報じられないために、細心の注意を行うべきなのです。

最近の企業不祥事は、こうした会見で、「いかに無難にやり過ごすか」を研究したマニュアルみたいなものがあるため、会見が荒れることはほとんどありません。しかし、日大はそのようなマニュアルすら無かったということになります。

日大の広報が、なぜこのような愚かな行動をとってしまったのか。私には心当たりがあります。
教育ジャーナリストとして活動していると、学校の広報担当がいかに愚かなのかを知る機会がたくさんあるのです。
「広報」は、実は「広告発注担当」を兼ねていることが多いため、潤沢な広告宣伝費を扱う部署でもあります。つまり、彼らにとって「マスコミ」や「ジャーナリスト」のことを「広告代理店の営業担当」として接することが多いのです。だから横柄な態度をとります。
そう、日大は、ふだんからテレビコマーシャルや新聞広告、進学情報誌、ネットメディア、スポーツイベントなど、ありとあらゆるところに広告宣伝費を放出しているのです。また、日大芸術学部出身のマスコミ関係者も多いことから、マスコミを牛耳っているつもりになってしまうのでしょう。

だから広報担当にしてみれば、日大が記者会見というイベントを開き、そこにタダで入場させ、ニュースのネタを振る舞ってやっているのだから、あまりひどい質問はして欲しくないのです。
でもそれは広報担当が教育・経営のスキルがないからそう思うのであって、本来は「きちんと釈明会見を行い、これから受験を考えている若者やその家庭に不安を払拭してもらう数少ないチャンス」と捉えて会見に挑むべきだったのです。

「ピンチはチャンス」という言葉があります。不祥事は隠せば隠すほど改善する機会を失いますが、不祥事を明らかにして原因を究明することで改善につながります。

日大は大き過ぎる組織となってしまったので、こういうチャンスでもなければ改善することはなかったでしょうから、今後はまともな広報担当を出して、もう少しちゃんとした記者会見を行っていただくことを期待しています。




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posted by まつもとはじめ at 14:16| 神奈川 ☔| Comment(0) | 教育機関の不正・犯罪 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする