私は報道ベースでしか事情を知らないが、ネットでは早くも少女を誹謗中傷する発言がされている。
例えば私が見つけたのはツイッターのこの発言。
「2年間逃げられなかったってどういうことなの...恐らく誘拐どかじゃなくて同意だろどう考えても」
これだけ大きな事件の被害者に対し、本人や家族が読んだら傷つきそうなことを、匿名の大人がよく書き込むものだと、辟易する。
圧倒的に知識や経験の乏しい当時13歳の女性が、体力的にもかなわない当時21歳の男性の誘拐行動に抗えるわけがないじゃないか。仮に「ちょっとくらいついて行ったら楽しいかも?」という発想でついて行ったとしても、それはせいぜい1時間や2時間の話であって、そこからまる2年間も監禁され、家族から引き離されることに同意する訳がなかろう。
また、大人になれば、いくらでも逃亡の機会をうかがったり、外出のすきを狙って交番に逃げ込むといった行動が取れることくらいは予想できても、圧倒的な力関係で服従させられる関係を強いられている場合、逃げて捕まったら殺されるかもしれないという恐怖を抱くことは十分に想像できる。
「逃げればいい」ことがわかっているのに、「逃げたら恐ろしいことが起こる」と恐れるがあまり、そこから抜け出せない人は多い。
例えば小中高校でいえば、壮絶ないじめの被害者。昨年、川崎で起きた中1生徒の殺害は、殺されるかもしれないとわかっていながら、被害者男子は無抵抗だった。抵抗したり、逃亡すれば、警察に逃げ込めば助かるのにそれをしない。なぜしないかといえば、加害者に逆恨みされたら、一生、追われる恐怖がつきまとうからだ。
私もかつて中学生の時、ものすごいいじめに苦しんだことがある。私がいた川崎市の中学校では、とにかく殴られるのだ。同級生、部活の先輩、そして時として教師も暴行する。
そんな状況に陥ったら、今であれば「学校へ行かなければいい」、「警察に告訴すればいい」、「相手を徹底的にぶん殴ればいい」など、いくつかの解決法を模索できる。しかし、暴力や違法行為の対処法なんて、中学生がわかるはずないではないか。逆らったら、より大きな力で壮絶ないじめが繰り返されるのは明らかではないか。
そんないじめを経験したからこそ、私は今回の女子中学生が2年間逃げられなかったという気持ちはよくわかる。DVで苦しむ女性のように、とにかく穏やかに1日を終えるためには、相手の機嫌をうかがい、無抵抗でいるしかないのだ。それでも、2年間じっと機会を待って、脱出できたのは大変な勇気の要る行動であった。
「女子中学生は男についていくことについて、同意した」…ですか。
奴隷的で理不尽な状況に置かれたことのない人は、軽々しく「同意」とか、女子中学生に落ち度があったなどと思うだろう。しかし、それは無知・無理解による大きな間違いである。
軽々しい一言が本人の目に留まったとき、どれだけ被害者の人権を踏みにじるか、特に匿名で安全なところから罵っている人には、大いに反省してもらいたいと思う。
15歳少女誘拐容疑で23歳男の身柄確保 千葉で長期間監禁か 2016/3/28 6:34 (2016/3/28 13:46更新)
約2年前に行方不明となった埼玉県朝霞市の女子生徒(15)が東京都中野区で保護された事件で、埼玉県警は28日、未成年者誘拐容疑で逮捕状を取り、指名手配していた職業不詳、寺内樺風(かぶ)容疑者(23)=中野区東中野=の身柄を静岡県伊東市内で確保した。首にけがをしており、静岡県内の病院に搬送された。数日で退院の見通し。埼玉県警は回復を待って逮捕する方針。
埼玉県警などによると、伊東市内で28日午前3時15分ごろ、「血だらけの男が歩いている」と通報があり、静岡県警の警察官が路上で寺内容疑者を発見した。同容疑者は首のけがについて「カッターで切った。自殺しようとした」という趣旨の説明をした。
捜査関係者によると、寺内容疑者は2014年3月、下校途中の女子生徒に「お父さんとお母さんが離婚する。弁護士のところに自分が連れて行く」とうそを言って誘い出したとみられる。
女子生徒は「(行方不明になった後は)ずっと千葉にいた。監禁した男に連れられて外出することがあった」と話しており、埼玉県警は寺内容疑者の監視が厳しく外出の際も逃げることができなかったとみている。
寺内容疑者は今年2月に中野区のマンションに転居したといい、千葉市のマンションで長期間、女子生徒を監禁していた疑いがある。県警は女子生徒から事情を聴き、不明になった経緯や2年間の状況について詳しく調べる。
寺内容疑者は3月に千葉大の工学部を卒業し、就職先も決まっていた。同大学が28日、明らかにした。
捜査関係者によると、女子生徒は27日に保護される直近はJR東中野駅近くにある寺内容疑者のマンションに一緒にいたとみられる。「普段は外から施錠され逃げることができなかった」と説明。「常に監視されていた」という趣旨の話をした。まれに寺内容疑者と外出することがあったが、県警は監視が徹底していたため、逃げ出す機会がなかったとみている。
県警は28日未明、寺内容疑者のマンションの部屋を家宅捜索した。
寺内容疑者は27日昼前に「秋葉原に携帯電話を買いに行く」と言って外出。この日は鍵が掛かっていなかったため、女子生徒は部屋から逃げ出し、JR東中野駅の公衆電話から110番した。〔共同〕
捜査関係者によると、女子生徒は「男は秋葉原に行く、6時ごろに帰る、と言って出掛けた。いつもは外から部屋を施錠されていたが、今日は掛かっていなかった」と話しているという。