2012年12月01日

奨学金を借りてはいけない

大学への進学機会を与えてくれる「奨学金」という制度があります。
この制度は、経済的に恵まれない家庭の子どもであっても、彼らに大学へ進学する機会を与えることにより、次世代の優れた職業人や研究者を輩出するという、とても素晴らしい理念に基づく制度だと思います。

しかし、我が国の公的奨学金の大半は、単なる税金の無駄遣いではないかというのが、率直な私の意見です。
とはいえ、一口に奨学金といっても、いろいろなものがあるので、その全てを否定する訳ではありませんので、この記事で述べる問題の奨学金について、その定義を示しておきます。

■学費相当分を貸与する奨学金が問題

まず、優れた学力要件を満たし、成績や研究成果で優秀な学生に対して行われる給付型(返還義務無し)の奨学金は今後も継続して構わないし、当然存続すべきだと思っています。
一方で、私が問題視している奨学金は、大学や大学院へ進学する者に貸与される、貸与型(返還義務有り)の奨学金です。

なぜ問題なのでしょうか。それは、学力最下層、貧困層の人たちが多重債務を負うことになるからです。

国立大学の授業料は、年間54万円。初年度は入学金が必要なので、82万円くらいになります。4年間在学して、ざっくり250万円を納めることになります。

私立大学の授業料は、豊田工業大学の年間60万円、初年度95万円。4年間で275万円がおそらく最も安いのではないでしょうか。(理系・文系の昼間部を検索しても、ここが一番安かった)
一方、私立大学のいわゆる文系のうち、芸術関係を除いたものでは、玉川大学文学部の年間100万円、初年度160万円と、おそらく私立の文学部では最も高い学校になるのではないでしょうか。教育研究諸料や施設設備金などを足し合わせると、4年間で580万円にものぼります。

4年間の費用を比較すると、国立大学が250万円、私立の豊田工大が275万円、私立の玉川大が580万円と、実に2倍の開きがあります。

玉川大学はたまたま高額に見えますが、別に私立大学では4年間で500万円を超える費用を要求するところは珍しくありません。もちろん、これはあくまでも大学に支払う金額であって、学生が一人暮らしをするとか、日々の生活費や教科書代、ダブルスクール代などを捻出しようとすると、これでは済まないことは明白です。
しかし、世帯収入が例えば400万円くらいの家庭で、これだけの金額を捻出するとなると、奨学金や教育ローンに頼らざるを得ないことになります。

■大学の学費は4年で840万円に膨れ上がる

そこで、現実にどれくらいの奨学金を得られるのかを、貸与型で計算してみました。

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独立行政法人日本学生支援機構-JASSOのウェブサイトより。

ちょっと見にくくてすみません。
この計算でいくと、学費相当分として620万円を借りて、月額3万5千円を20年間に渡って返済していくというものになります。総返済額は840万円となります。

平均的な企業の大卒初任給は月20万円程度です。社会保険やなんだと控除される金額を除くと手取り15万円程度。一人暮らしをしている人なら、家賃・光熱費・食費で10万円は飛んで行きますから、残金5万円の中から3万5千円を捻出しなければなりません。

それでもこれは、「大卒待遇で就職できたら」の話であって、中小零細企業の場合、派遣やフリーターの場合など、すぐに支払いが滞ってしまいそうな返済額です。とにかく20年もの間、支払っていけるだけの、かなり堅い企業でなければ、計画通り返済していくというのはかなり難しいですよね。
もちろん、生活に困窮している場合などは、公的奨学金であれば猶予を受けられる可能性はありますが、それはあくまで猶予であって、免除ではありません。

国立大学であればもともと学費は安いし、それなりに優秀だからさほど苦労せずに就職ができます。だから学費全額を貸与方奨学金でまかなったとしても、収入が安定しているのですから、何とかなります。
しかし問題は、学費が異様に高く、どちらかといえば社会的な評価も低い、就職が困難な大学に、奨学金をあてにして4年間過ごしてしまったケース。

それこそ、元金600万円で、20年かけて800万円を分割して返済するなんてのは、新卒の学生が背負う金額としては、ものすごく重くありませんか。
600万という金額は、中古の安いワンルームマンションくらい買えてしまう話です。

時間のある人はこの動画をご覧ください。

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18歳で大学に入学し、22歳で卒業した人がいたとします。
文系の、まあどちらかといえば就職が難しい私立大学に入学し、600万円の借金を背負ったとします。
しかし現実は厳しく、32歳(10年)の時点でやっと半分返済できたとなります。それでもまだ10年残っていて、利息を含めてまだ400万円も残っているのです。
国立大学を卒業した、優秀な人は、同じ額で払い続ければ、既に完済しているのにです。

こうして考えてみると、優秀な人は、安い学費で名門大学へ進学し、手堅い就職ができる。返済する奨学金も少ないし、収入も多いから返済が早く完了する。
一方で、優秀でない人は、高い学費で無名大学へ進学し、就職活動に苦労して、やっと就職できた先が中小零細。リストラに怯え、サービス残業を受け入れ、少ない給料の中から高額な奨学金を返済していかなければならないのです。

そんな現実を見てみると、よくもまぁ、こんな本を書いた人がいたもんだと、呪いたくもなります。
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子どもを大学に行かせるお金の話―年収200万でもあきらめない! [単行本(ソフトカバー)] / 久米 忠史 (著); 主婦の友社 (刊)
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■家計が苦しい人は大学へ行くな

私は、家計が苦しくて、さほど優秀ではない子どもは、なるべく早めに大学進学をあきらめ、とりあえず食うに困らない職業に就くため、格安の職業訓練校のようなところで資格や就業支援を受けるべきだと思っています。
それでも、「どうしても大学を出ておきたい」と思うなら、まずは2年制の専門学校へ行き、資格や職を確保した上で、通信制や夜間部へ3年次編入して大学に進学すべきだと思うのです。

文系の専門学校であれば、初年度こそ私立大学と同等の学費がかかりますが、必要な学費はわずか2年です。かかる学費は大学の半分である上、大学よりも2年早く就職できるのですから、仮に奨学金の返済が必要だったとしても、さほど苦労はありません。

もちろん、一度しか無い人生ですから、500万だろうが1千万だろうが、借金してでもやりたいことに賭けるということは悪くありません。こうして成り上がった人たちも多くいます。しかし、冷静に考えれば、ギャンブルは胴元が儲かるだけというのが自明です。この場合は大学が胴元といえるでしょう。

経済的に苦しい人が、大して学力も無いのに、大学へ行くのであれば、奨学金に頼らざるを得ない。
良い就職をして返済していくつもりが、4年制大学卒業者の就職内定率は公開されているもので63%。ただしこれは、全国平均で有名大学や医療系の学部を含めての平均です。無名で文系の大学で、資格も持っていない学生は不利に決まっているじゃないですか。
こんな丁半博打みたいなものに、4年間で5〜600万円の奨学金(借金)を負うというのは、かなり無茶な話です。

私は「頑張って勉強すれば、誰もが偏差値を上げられる。偏差値を上げさえすれば、良い大学に入れる。そして良い大学を卒業すれば良い就職ができる」というものは、社会が目指すべき方向としては間違っていないとは思うけれど、現実社会としては単なる幻想だと思っています。人には人それぞれの得手不得手があるのです。それを無視して「勉強をすれば明るい未来が開ける」と言う人がいるとすれば、そいつはとんだペテン師です。

その幻想を真に受けて、最下層の人たちが巨額の借金を背負い、その一方で大学の経営が潤うというのは、ちょっと違うような気がします。

私は「奨学金」とは、本来「優秀な人がただでもらうもの」と思っています。
返せる見込みのない借金は、奨学金・教育ローンなんて名前はついていても、それはただの借金。金額が大きいのですから、実質的には多重債務です。

母「うちはお金が無いから大学へ行かせることができない」
高校教師「そんなことはありません。奨学金を使えば大学行けます!」

こんなやり取りが、家計の多重債務化を生んでいくような気がします。
貧乏人がバカを見るのです。
みなさん、身の丈に応じた進学先の選択をしませんか。

(2013年9月17日追加)

posted by まつもとはじめ at 00:59| 神奈川 ☀| Comment(10) | TrackBack(0) | 奨学金 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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